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「力を抜いて」と言われても、力が抜けないのはなぜ?

24 時間前
読了時間: 12分
マッサージを受ける女性

「力を抜いてくださいね」


力を抜いてくださいね。

マッサージやストレッチを受けていると、こんなふうに言われることがあります。

言われた本人としては、少し戸惑います。

「え、もう抜いているつもりなんだけど」

そこで意識して肩を下げてみたり、腕をだらんとさせてみたりする。それでも施術する側から「もう少し楽にして大丈夫ですよ」と言われると、今度は力を抜くことに一生懸命になってしまいます。

休みに来たはずなのに、「うまく脱力しなければ」という新しい仕事がひとつ増えたようです。


でも、これは珍しいことではありません。

たとえば腕を持ち上げてもらうとき、自分で動かさなくてもいいのに、相手の動きに合わせて無意識に腕を持ち上げてしまう。

肩を触られて初めて、思っていたより肩が上がっていたことに気づくこともあります。


日常でも似たようなことが起きています。

パソコンに集中しているうちに肩が少し上がっていたり、スマートフォンを見ながら顎に力が入っていたり。急いで車を運転していると、いつの間にかハンドルを強く握っていることもあります。

どれも、その瞬間に「よし、力を入れよう」と考えているわけではありません。


気づいたら入っている。

問題なのは、その状態が長く続くと、自分では力んでいることさえ分からなくなることです。

身体に力が入ること自体は、決して悪いことではありません。

姿勢を保ったり、集中したり、寒さや緊張に対応したりするためにも、身体は必要に応じて筋肉を使っています。

ただ、もう頑張らなくてもいい場面になっても、その力が少し残っていることがあります。

仕事を終えて家に帰ったのに肩が上がったまま。ソファに座っているのに顎を噛みしめている。

布団に入ったのに、身体のどこかがまだ昼間の続きをしている。


では、なぜ私たちは自分でも気づかないうちに力んでしまうのでしょうか?

そして「力を抜こう」と思っても、思ったほど簡単には抜けないのはなぜなのか。

今回は、普段あまり意識することのない身体の「力み」から、緊張とリラックスについて考えてみます。





目次






1章 身体には、気づかないうちに力が入っている


身体に力が入る瞬間というと、重いものを持つときや運動をするときを想像しやすいですが、実際にはもっと小さな力みが一日のあちこちにあります。

パソコン作業に集中しているうちに肩が少し上がる。スマートフォンを長く見ていると、首や顎まわりが固くなる。

車を運転しているとき、気づけばハンドルを必要以上に強く握っている。


寒い日は肩をすくめますし、細かい作業をしているときは指先まで力が入りやすい。

人前で話す前なら、お腹や背中がなんとなく固くなることもあります。

こうした力みの多くは、「今から力を入れよう」と考えて起こしているわけではありません。


何かに集中したり、緊張したり、身体を同じ姿勢に保とうとしたりする中で、自然に起きています。

だからこそ、自分では気づきにくいのでないのでしょうか。

たとえば仕事をしている途中で、「肩に力が入っていないかな」と急に確認してみると、思っていたより肩が上がっていたり、奥歯を噛みしめていたりすることがあります。

その瞬間に少し肩を下げたり、口をゆるめたりすると、「こんなに力が入っていたんだ」と初めて分かります。


そうなってくると、力が入っている状態が長く続くと、それが自分にとって普通に感じられて気が付かないことも多いです。

毎日パソコンに向かっている人なら、肩や首に少し力が入った姿勢のまま何時間も過ごすことがあります。

最初は違和感があったとしても、同じ状態を繰り返しているうちに、わざわざ意識しなくなっていきます。

マッサージを受けているときに「力を抜いてください」と言われても、自分ではすでに力を抜いているつもりなのは、そのせいかもしれません。

身体にとっては力が入っていても、本人の感覚では「いつも通り」。

だから、外から触れられたり、腕を持ち上げられたりして初めて、「あれ、まだ自分で支えていたんだ」と気づくことがあります。


もちろん、すべての力みが悪いわけではありません。

姿勢を保つにも、仕事をするにも、歩くにも、身体は筋肉を使います。必要なときに力が入るのは、ごく自然なことです。


気にしたいのは、必要がなくなったあとも、その力が残っていないかということ。

パソコンを閉じたのに肩が上がったまま。運転を終えたのに手がまだ強く握られている。

帰宅して座っているのに、呼吸までどこか浅い。

身体は仕事を終えているのに、一部だけまだ頑張っているような状態です。

だから「力を抜く」ことを考える前に、まずは自分の身体のどこに力が入っているのかに気づくこと。

肩なのか、首なのか、顎なのか、手なのか。

それに気づくだけでも、身体の状態は少し見えやすくなります。





2章 そもそも、身体はなぜ力を入れるのか


身体に力が入ることには、ちゃんと理由があります。

立っているときは姿勢を保つために、歩くときはバランスを取るために、重いものを持つときは身体を支えるために筋肉が働きます。集中して細かい作業をするときや、寒い場所にいるとき、人前で緊張するときにも、身体は自然と少し固くなります。


つまり、力が入ること自体は悪いことではありません。

むしろ、その場をうまく乗り切るために身体がしている、ごく普通の反応です。


たとえば、急に大きな音がしたとき。

思わず肩が上がったり、身体が少し縮こまったりします。転びそうになったときには、とっさに手や足に力が入ります。


こうした反応は、「今から身体を固くしよう」と考えて起こしているわけではありません。

身体が先に反応しています。

仕事の緊張も、少し似ています。


締め切りが迫っている。人と話す予定がある。失敗したくない。早く終わらせたい。

そんなとき、頭では普通に仕事をしているつもりでも、肩が上がったり、呼吸が浅くなったり、手に力が入ったりすることがあります。

集中している時間が長ければ、その状態も長く続きます。


問題になるのは、「力が入ること」よりも、必要がなくなったあとも切り替わりにくいことです。

会議は終わったのに肩はまだ固い。仕事を終えたのに顎に力が入っている。家に帰ってソファに座ったのに、身体だけはまだ何かに備えているような感じがする。

頭では「もう終わった」と分かっていても、身体の方は少し遅れてついてくることがあります。


ここで関係してくるのが、ストレスや緊張です。

忙しい日が続いたり、考えることが多かったりすると、身体もそれに合わせて緊張しやすくなります。特に肩や首、顎、手などは、自分でも気づかないうちに力が入りやすい場所です。


だから、肩に力が入っているからといって、「姿勢が悪いから」「意識が足りないから」と単純に考える必要はありません。

その日の予定や仕事、人とのやり取り、暑さや寒さ、疲れ具合まで、身体はいろいろなものの影響を受けています。


一日が終わっても、すぐには力が抜けないことがある。

それは、身体が怠けているわけでも、リラックスするのが下手なわけでもありません。

それでも人それぞれ、生活のどこかで切り替わる瞬間があるのでしょう。






3章 「力を抜こう」とすると、かえって難しい。


「肩の力を抜いてください」と言われると、多くの人はまず肩のことを考えます。

肩を下げてみる。腕をだらんとさせてみる。深呼吸してみる。

それでも「まだ少し力が入っていますね」と言われると、今度はもっと真剣に力を抜こうとします。


ここで少し不思議なことが起こります。

本来はリラックスするためなのに、「ちゃんと力を抜かなければ」と意識するほど、身体の状態を細かく確認し始めてしまうのです。

「これで合っているかな」

「まだ力が入っているのかな」

そんなふうに考えているうちに、いつの間にか“力を抜くこと”まで頑張る作業になってしまいます。


力を抜くというのは、意外と直接やろうとすると難しいものです。

たとえば「今すぐ自然に笑ってください」と言われると、少し難しく感じるのと似ています。笑おうと意識した途端に顔の動きが気になってしまうように、脱力も意識しすぎると、かえって身体の一部分へ注意が集まりやすくなります。


そんなときは、力が入っている場所そのものを何とかしようとするより、少し別のところから身体をゆるめてみる方が自然なのです。

たとえば、息をゆっくり吐いてみる。

強く握っていた手を開く。奥歯が触れていたら、口元を少しゆるめる。椅子に座っているなら、背もたれへ身体の重さを預けてみる。

「肩を下げよう」と頑張るのではなく、身体を支えていた仕事をひとつ減らしてあげるような感覚です。


施術を受けているときも同じです。

腕を動かしてもらうなら、自分で先回りして動かそうとせず、相手に重さを預けてみる。

最初は少し落ち着かないかもしれませんが、普段は自分の身体は自分で動かすのが当たり前なので、何もしないで任せる方がかえって難しいこともあるでしょう。

それでも、何度か繰り返しているうちに「あ、何もしなくていいんだ」と分かる瞬間があります。そしてようやく肩や腕の重さが少し変わって感じられるようになるんです。


リラックスは、「力をゼロにすること」ではなく、必要のない力を少し手放し身体を支える仕事を減らしていくこと。

そう考えると、「うまく力を抜けない」と悩む必要も少しなくなります。

力を抜くことまで上手にやろうとしなくても大丈夫。

呼吸や手のひら、顎、姿勢など、気づきやすい場所からひとつずつゆるめていけば、身体全体も少しずつついてくることがあります。





4章 力が抜けるのは、「安心した」とき


力を抜こうとしてもうまくいかないのに、気づいたら自然に抜けている瞬間があります。

たとえば、家に帰って靴を脱いだとき。

玄関で荷物を置いて、「はあ」と息が出る。そのままソファに座ると、気が抜けて外にいたときより肩が少し下がっていることがありますね。


お風呂に入ったときも似ています。

温かい湯船に身体を沈めると、背中や脚を自分で支えなくてもよくなります。最初はまだ頭の中で今日の出来事を考えていたのに、しばらくすると考えることまで少なくなってくる。

布団に入った瞬間に、思わず大きく息を吐くこともあります。


どれも「今から力を抜こう」と頑張っているわけではありません。

身体を預けられる場所があり、もう急がなくてよくて、次の予定もしばらくない。そんな状態になると、自然と力が抜けていきます。


ここには、リラックスを考えるうえで大切なことが隠れているように思います。

身体は、ただ命令されれば力を抜くわけではなく、「もう頑張らなくても大丈夫」と感じられたときに、少しずつ緊張をほどいていくのでしょう。


逆に考えると、落ち着かない場所で「リラックスしよう」としても難しいのは自然です。

時間を気にしている。次の予定が迫っている。寒い。周りの音が気になる。スマートフォンの通知が続いている。


そんな状態では、身体も完全には休みに入りにくいものです。

だから、力を抜きたいときには、自分の身体だけを何とかしようとするより、周りの環境を少し変えてみるのもひとつです。


椅子に深く座る。荷物を置く。照明を少し落とす。スマートフォンから離れる。温かい場所でゆっくりする。

ほんの小さなことでも、「もう少し力を抜いてもいい」と身体が感じられるきっかけになります。

リラクゼーションサロンで施術を受ける時間も、そのひとつでしょう。

ベッドに身体を預け、自分で動かなくてもいい時間をつくる。普段は意識していなかった肩や腕の重さを感じたり、「こんなところにも力が入っていたんだ」と気づいたりする。


身体がゆるむ感覚を知ると、普段の力みにも少し気づきやすくなります。

大切なのは、いつも完全に脱力していることではありません。

必要なときには力を入れて、必要がなくなったら少し戻す。

その切り替えができれば十分です。

「力を抜く」のが苦手なのではなく、言い方を変えればまだ身体が頑張っている途中にいるだけかもしれない。

そう考えると、リラックスするために必要なのは上手な脱力よりも、まず身体が安心して力を手放せる時間や場所を知ることなのかもしれません。




まとめ | 力を抜く前に、力が入っていることに気づく


「力を抜いてください」と言われても、すぐにはうまく抜けないことがありますが、それは決して珍しいことではありません。


仕事に集中していたり、人と話して緊張していたり、寒さに身体を縮めていたり。肩や首、顎、手、背中などには、そのとき必要だった力が知らないうちに残っていることがあります。


しかも、そうした状態が長く続くほど、自分では力んでいることに気づきにくくなります。肩が上がっていても、手を強く握っていても、それがいつもの状態になってしまえば、本人にとっては「普通」になってしまうのでしょう。


だから、いきなり身体を完全に脱力させようとするより、まずは「今、肩に少し力が入っているな」「奥歯を噛みしめていたな」と気づくくらいで十分です。

気づいたところで、ゆっくり息を吐いてみたり、握っていた手を開いたり、椅子やベッドに身体の重さを預けたりする。ほんの小さな変化でも、頑張り続けていた身体にとっては、力をゆるめるきっかけになります。


もちろん、身体はいつも力を抜いていればいいわけではありません。集中するときにも、姿勢を保つときにも、日常のさまざまな場面で筋肉は必要に応じて働いています。

大切なのは、力を入れないことではなく、もう頑張らなくてもいい場面になったときに、意識を切り替えて、その力を少しずつ戻していくことなのでしょう。


仕事が終わったとき、家に帰ったとき、お風呂に入ったとき、布団に横になったとき。

そんな一日の節目に、自分の身体がまだどこかで頑張っていないか、ほんの少し気にする意識を持つことに慣れていく。

力みに気づいたら、そこから必要のなくなった分だけゆるめていく。無理なく身体を休ませるためには、自分を気に掛けることから始まるのではないでしょうか。

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