『“怒り”で肩が凝る?─肩甲骨にたまる気持ちの行き場』
- 京都ほぐし堂WEB

- 1月12日
- 読了時間: 14分
更新日:2 日前

怒りが消えたあとに、肩が重たい気がするのはなぜ?
なんでもないふうに過ごしていたはずの1日。
だけど、思い返すと、あの瞬間──
ちょっとしたことでイラッとした自分がいたな…と気づくときがあります。
不思議なもので、そのあとから、なんだか肩まわりが重たく感じることがあるのです。
首の付け根がギシギシしたり、背中がバリッと張ったような、あの“怒った日の背中”。
そんな体の感覚に気づいたとき、ふと思うのです。
「もしかして私、怒りを、肩で受け止めてるのかもしれないな」って。
怒りという感情は、どちらかといえば、すぐに消えてしまうもの。
その場をやり過ごしたり、時間が経ったりすれば、表情にも出さなくなるし、言葉にも残さなくなる。
でも──
体の中のどこかには、その余韻が残っていることがあるのかもしれません。
とくに、肩まわり。
肩甲骨や首、背中のあたりが、まるで感情の“貯蔵庫”のように、いろんな気持ちを溜めこんでしまう。
これって医学的に証明されていることではないかもしれません。
でも、誰にでも「怒ったあとは肩がこる」「背中が固まる気がする」といった感覚があるように思うのです。
このコラムでは、「怒り」と「肩」の関係を、やわらかく、日常の感覚から見つめていきます。共感できる感情のこととして。
たとえば──
・怒りを言葉にできないと、体に残る?
・肩甲骨って、気持ちとつながってる?
・我慢するタイプの人ほど、背中に出るの?
・怒ったあとの「こわばり」を、どうほぐす?
そんな視点から、心と体のちょっとしたつながりをほどいていきたいと思います。
怒ることは悪いことではありません。
ただ、怒ったあとの体が、少しこわばっているのなら、そのサインをやさしく受け止める時間があってもいいかもしれませんよ。
目次
第1章|「怒り」を飲み込むと、なぜか肩がこる気がする
「腹が立つことがあったのに、言い返せなかった」
「ちょっとムカッとしたけど、空気を読んで流した」
「本当は不満があったのに、ぐっと飲み込んだ」
そんな経験、誰にでもあるのではないでしょうか。
怒りは表に出すと波風が立つから、できれば穏便に済ませたい。
そう思って、大人になるにつれて、怒りの感情を“内側で処理する”ことが増えていきます。
でも──
怒りを飲み込んだあと、なんだか「肩がずっしり重いなあ」と感じる瞬間、ありませんか?
感情と筋肉は、思っているより近くにある?
怒ると、自然と体に力が入ります。
呼吸が浅くなる。
肩がすくむ。
首まわりが固くなる。
背筋がピーンと張る。
これらは「緊張」に近い反応で、無意識のうちに、筋肉をぎゅっと固めてしまうのです。
とくに怒りは、ぐっと内側にエネルギーをためこむような感情。
だからこそ、言葉にできずに抱え込んだとき、体のどこかに“残って”しまいやすいのかもしれません。
その代表格が、肩まわり──つまり、肩甲骨まわりの筋肉。
人の身体は、感情と密接に関わっています。
とくに、怒りや不満のような「エネルギーが強い感情」は、体の一部に“圧”として蓄積されることがあるのです。
「怒りの矢印」が外じゃなくて“内側”に向くとき
怒りというのは、本来は“外”に向かうエネルギーです。
「なんでそんなこと言うの?」
「ひどい!」
「それはおかしいと思う!」
でも、そのエネルギーを外に出せないとき、人はその矢印を“自分の中”に向けてしまいます。
「私が我慢すればいい」
「こんなことでイライラするのは、子どもっぽいかも」
「ここで言ったら、場の空気が悪くなるし…」
このとき、自分の中に怒りを押し込めて、“凍結”させるような状態が起きます。
それはまるで、燃え上がる炎にフタをするようなもので、
その熱は、どこかに行くわけではなく、体の中に「こわばり」として残っていくのです。
それが肩こりとして表れたり、首が回らなくなったり、背中の痛みに変わったりすることもあります。
肩甲骨まわりは、怒りを“背負う”場所?
「怒りを背負う」という言い方をする人がいます。
実際、言いたいことを言えなかったとき、
人はまるで“荷物”を背負ったように、ずっしりと肩が重くなることがあります。
肩甲骨まわりは、感情の“負荷”を感じやすい部位のひとつ。
それは、身体構造としても、たくさんの筋肉や神経が集中し、姿勢を支えるポイントでもあるから。
精神的なプレッシャーやストレスが長く続くと、自然とここがガチガチに固まっていくのです。
怒りは“荷物”じゃないはずなのに、
私たちは無意識のうちに、それを肩で抱えてしまっているのかもしれません。
怒った自分を責めると、もっと固くなる
そして、もう一つ大事なのは、
「怒る自分を責めないこと」。
怒ったあと、「あんなふうに思っちゃダメだったかな」と自分を責めてしまうと、
感情に“罪悪感”が上乗せされて、さらに心身を固くしてしまうのです。
本当は、怒りが湧くこと自体は、自然なこと。
怒るというのは、「大切なものを守る」ための心の反応でもあります。
だからこそ、
「怒ってもよかった」
「そう思う自分も自然だった」
「でも今は、少しずつ手放していこう」
そんなふうに、“肩の力を抜いてあげる言葉”を、自分自身にかけてあげられるといいかも。
第2章|肩甲骨まわりをゆるめると、気持ちまでふわっと軽くなる理由
怒りやストレスが肩にたまりやすいことは、第1章でお話ししました。
でもそれをどうやって「手放す」か──そこに、ひとつの鍵となるのが“肩甲骨”です。
この章では、感情が宿りやすい「肩甲骨まわり」をゆるめることが、なぜ心のやわらぎにもつながるのかを、身体・呼吸・脳の3つの側面からひも解いていきます。
肩甲骨は、感情のハンモック
肩甲骨は、背中側で左右に浮かぶように位置している骨で、実は“宙ぶらりん”に近い存在です。
鎖骨や筋肉とつながってはいますが、肋骨の上にふんわりと乗っているため、非常に自由度が高く、動きやすい構造になっています。
そのため、姿勢のクセ・緊張・ストレスといった影響を受けやすく、こり固まりやすいのも事実。
たとえば──
緊張で肩をすくめたまま過ごす
長時間のデスクワークで前かがみが続く
スマホを見る姿勢がクセになっている
こうした日々の“ちいさな積み重ね”が、肩甲骨の可動性を奪い、
「肩こり」だけでなく、「呼吸が浅くなる」「疲れやすい」といった状態にもつながっていきます。
それはまるで、感情の“ハンモック”がピンと張りつめたままになって、心までぎゅっと縮こまってしまうような感覚です。
呼吸と肩甲骨は、見えないところでつながっている
意外かもしれませんが、肩甲骨の動きと「呼吸」には深い関係があります。
深呼吸をすると、肩や背中がふわっと広がる感覚がありますよね。
あれは、息を吸うときに肋骨が開き、それに連動して肩甲骨も少し動いているからです。
逆に、肩甲骨まわりがガチガチに固まっていると、肋骨の動きも制限されてしまい、
知らないうちに「浅い呼吸」がクセになってしまうのです。
浅い呼吸が続くと、交感神経(=緊張モード)が優位になり、
「常に気を張っている」「なんとなく疲れが抜けない」といった状態に。
つまり、肩甲骨をゆるめて“呼吸のスペース”を取り戻すことは、
心の緊張をほどくための“入り口”にもなるのです。
動かすことで「脳」もゆるむ
肩甲骨まわりをほぐすストレッチや体操には、脳にも心地よい刺激を与える効果があると言われています。
ポイントは、「ゆったりした動き」と「意識を向けること」。
肩をぐるっと大きく回す
背中の筋肉を伸ばす
肩甲骨を寄せる → 離すを繰り返す
これらの動きを、呼吸と合わせながらゆっくり繰り返すと、
“安心の神経”とも言われる副交感神経が優位になり、脳が「今はリラックスしても大丈夫だよ」と判断してくれるのです。
さらに、“動いている実感”があることで、
心にたまっていた怒りやモヤモヤを「出口」から自然に流していける。
感情に名前をつけて処理しようとしなくても、
「動かす」という行為そのものが、体と心にリズムを取り戻してくれるのです。
ふーっと息を吐くことが、“怒り”をやわらげる第一歩
もし今、少しイライラしていたり、緊張が取れなかったりするとしたら──
まずは、深く息を吸って、ふーっと長く吐いてみてください。
そして、肩を大きくまわしてみる。
背中に手をあてて、呼吸とともにふくらむ感覚を味わってみる。
それだけで、肩甲骨まわりの緊張が少しやわらぎ、
怒りやストレスの“手ざわり”が、少しずつ変わっていくはずです。
第3章|“怒りが肩にくる”という身体的な理由
「怒ったときに肩がガチガチになる」
「ムカつく出来事のあと、肩が張って仕方がない」
そんな経験はありませんか?
医学的にも心理学的にも、「怒り」と「肩こり」はまったく無関係ではありません。
この章では、“怒りが肩まわりの緊張を生む”という身体のメカニズムについて、筋肉・神経・自律神経の観点からやさしくひも解いていきます。
1|怒りは「戦う準備」──肩にチカラが入る理由
怒りという感情は、元をたどれば「身を守るための防御反応」です。
野生動物であれば、敵に遭遇したときに必要なのは、「逃げる」か「戦う」か。
そのため、怒りのスイッチが入ると、人間の身体も無意識のうちに“戦闘モード”に切り替わります。
そのとき、まず緊張するのが肩・首・背中といった「上半身の筋肉群」。
肩をすくめる
胸を張る
肘を曲げて腕を構える
これらはすべて、「防御」または「攻撃」の準備姿勢であり、肩まわりの筋肉をギュッと収縮させる動きです。
つまり、怒っていなくても「怒りを感じた」時点で、体は反射的に緊張しているのです。
2|交感神経のスイッチが入ると、肩はこわばる
怒りを感じた瞬間、脳の「扁桃体(へんとうたい)」が反応し、
そこから自律神経系──とくに交感神経が一気に活性化します。
交感神経は「闘争・逃走」の神経とも呼ばれ、体を戦闘モードに導く役割を担っています。
このとき体に起こるのは…
心拍数が上がる
呼吸が浅く速くなる
筋肉が収縮し、反応速度が高まる
といった生理的変化。そしてこれらの変化は、真っ先に“肩”に現れることが多いのです。
とくに、僧帽筋(そうぼうきん)や肩甲挙筋(けんこうきょきん)など、肩から首にかけての筋肉群はストレスの影響を受けやすく、怒りや不安がそのまま“こわばり”として蓄積されやすいのです。
3|「我慢」や「抑制」が肩にたまる理由
怒りの感情を外に出すことは、多くの場面で“好ましくない”とされています。
とくに日本社会では、
感情的にならないように
その場の空気を壊さないように
大人として冷静にふるまうように
という“内に溜める文化”が根づいているため、怒りを感じても表に出さず、じっとこらえる人が多いのです。
この「我慢」や「抑制」が、結果的に筋肉の緊張となって肩にあらわれる。
感情が身体に置き換えられているとも言えます。
たとえば…
理不尽な対応に「すみません」と頭を下げたときの、ぐっとこらえた肩
説教を受けながら、腕組みしていた無意識の姿勢
イライラしながらも言い返せなかった日、帰宅後の肩の重だるさ
これらはすべて、怒りを直接的に出せなかったことで“筋肉が代理で抱えている状態”なのです。
4|「怒りの後」に肩こりが悪化するメカニズム
ストレスや怒りを感じたあと、すぐにマッサージに行きたくなる。
または「今日は肩がひどいなあ」と思う日ほど、仕事や人間関係でムカッとする出来事があった──
というケースは少なくありません。
これは、怒りに伴う神経の緊張・筋肉の収縮が「遅れて症状として出てくる」ことに由来します。
興奮しているときは交感神経優位で、身体がアドレナリンに満ちている状態。
このときは「痛み」や「だるさ」をあまり感じません。
しかし、帰宅して気が抜けたとき、ふっと副交感神経に切り替わると、
ようやく筋肉のこわばりや疲労が自覚されてくるのです。
つまり、「怒ったあとに肩がこる」というよりも、
「怒ったときに無意識に力が入り、それがあとから表面化してくる」というのが、より正確な表現かもしれませんね。
第4章|“感情のゆがみ”を身体に残さないために ─ 怒りと肩の関係をリセットする方法
怒りが肩にたまりやすい理由を見てきましたが、
大切なのは「怒りを感じないようにする」ことではなく、
「怒りのあとの自分の身体と心を、どうやさしく整えてあげるか」です。
この章では、感情と身体のつながりをふまえて、
怒りに振り回されすぎないためのリセット法や、肩こり予防の考え方をご紹介していきます。
1|怒ってもいい。でも、そのまま残さない
怒りは自然な感情です。
理不尽なこと、失礼な態度、期待を裏切られた場面で腹が立つのは当たり前。
それを「怒ってはいけない」と押さえ込んでしまうほど、
怒りのエネルギーはどこかに蓄積され、身体をこわばらせていきます。
だからこそ大事なのは、怒りを“感じきる”こと。
怒っている自分に気づく
その怒りの理由を客観視する
できれば言葉にしてみる(紙に書く、誰かに話す)
こうして“気づき”や“外に出す”ことで、
感情と身体の間に小さなスペースが生まれ、肩の緊張もほぐれやすくなります。
2|「肩を下ろす」練習をしてみる
怒りやストレスのある日は、無意識に肩が上がっていることが多いです。
気づかないうちに「力が入っている肩」を、自分でそっと下ろしてあげる。
たとえば…
ゆっくりと深呼吸しながら、肩の位置を確認してみる
耳に近づけた肩を5秒かけて思いきりすくめて、ストンと下ろす
脇を少し開いて、腕の重さを意識してぶら下げてみる
こうした“意識的な脱力”は、ただのストレッチ以上に効果的です。
肩の力が抜けると、呼吸が深くなり、心拍数が落ち着き、
身体全体が「安心モード」に切り替わっていきます。
3|怒りのあとの「セルフ感情ケア」
身体の緊張とともに、心の緊張もゆるめることが、怒りのリセットには欠かせません。
次のような方法は、怒りの余韻を“ためこまない”ケアとして役立ちます。
✔ 静かな音楽を聴く
怒りのあとは、交感神経が優位になっています。
静かなピアノやヒーリングミュージックを流すことで、副交感神経が刺激され、心拍・呼吸・筋肉の緊張がゆるみます。
✔ あたたかい飲み物を飲む
カフェインを避けたハーブティーや白湯など、身体を温めるものをゆっくり味わうことで、
「自分を落ち着けようとしている」感覚が生まれます。
✔ 肩を撫でる
自分の肩を両手でやさしく撫でるだけでも、
「緊張してたね」「ありがとう」と身体をいたわる効果があります。
簡単なタッチでも、副交感神経を刺激する“スキンシップ”になります。
4|「怒りの置き場所」をつくる
怒りが肩にたまり続けるのは、「置き場所」がないからかもしれません。
納得できない話を、ずっと頭の中でリピート再生している
本当は伝えたかった気持ちを、言えずに飲み込んでしまっている
こうした感情の“詰まり”が、筋肉の詰まりになって現れやすいのです。
そのため…
ノートに書き出す
信頼できる人に愚痴を聞いてもらう
ひとりで口に出して言ってみる
など、「感情を外に出す習慣」を取り入れることが、肩こり予防にもつながります。
怒りを言葉に変えることで、それは「自分を守ろうとした力」として意味を持ちます。
そして、それを外に出したあとは、心も身体も、すっと軽くなっていくのです。
まとめ|“怒り”のあと、肩に手を当ててあげられる人に
怒りは、私たちが生きている証です。
理不尽さに傷ついたとき、大切なものが踏みにじられたとき、
心は反応し、身体はその余波を受け取ります。
なかでも「肩」や「肩甲骨まわり」は、
無意識のうちに緊張を背負い、怒りの記憶をそっと溜め込んでしまいやすい場所です。
言いたかったけど、言えなかったこと
我慢したこと
必死に堪えた涙や、静かに湧き上がった苛立ち
そのすべてが、肩の重さとして、今日のあなたの背中に残っているかも。
けれど私たちは、怒りの我慢=ストレスと感じてしまう。
そして怒りを感じることは、「自分を大切にしている」という証でもあります。
だからこそ大切なのは──
怒りを感じたあとの「自分の整え方」。
静かに深呼吸をして、肩に触れてみる。
言えなかったことを、紙に書き出してみる。
温かい飲み物で、緊張した心をじんわりとほどく。
そんな小さなケアを積み重ねることが、
「怒りと上手につき合う力」を育てていきます。
怒りが過ぎ去ったあと、
肩にそっと手を当てて「もう大丈夫」と言える人は、
自分にも他人にも、やさしくいられる人なのかもしれません。
怒らないことを目指すのではなく、
怒りを抱えた自分を自分でちゃんと癒せる人でいること。
それが、肩こりのない体と、
しなやかな心をつくる第一歩なのではないでしょうか?


